序章:111周年の宝塚歌劇が放つ、新時代のエンタテインメント
2025年、宝塚歌劇団宙組は、新トップスター桜木みなと、新トップ娘役春乃さくらのお披露目公演として、TAKARAZUKA MUSICAL ROMANCE『PRINCE OF LEGEND』を上演しました。この作品は、一大ブームを巻き起こした「HiGH&LOW」の制作陣により生み出された「PRINCE OF LEGEND」シリーズを、LDH JAPANとの新たなコラボレーションによりミュージカル化したものです。
「学園バトル×ロマンス×コメディ」が融合した、まさに「祭エンタテインメント」と呼ぶにふさわしい本作は、従来の宝塚ミュージカルの枠を超えた、ポップでハイスピードな展開が魅力でした。総資産数兆円の御曹司「セレブ王子」朱雀奏を中心とした大勢の「王子」たちが、学園で開催される「伝説の王子選手権」で、伝説の王子の座を勝ち取るべくバトルを繰り広げるという設定は、宝塚の持つ華やかさと見事に融合しました。
本レポートでは、桜木みなとがトップスターとして見せた新しい宙組のカラー、春乃さくらが体現したヒロイン像、そして豪華な王子たちを演じた組子の熱演を詳細に分析し、この意欲作が宝塚歌劇の歴史に刻んだ「新伝説」を深く掘り下げていきます。
第一部:宙組新トップコンビが魅せるポップで知的なロマンス 💖
宙組新体制の船出を飾る本公演で、桜木みなとと春乃さくらは、作品が持つスピード感とコメディ要素を見事に乗りこなし、新生宙組の明るくモダンな魅力を提示しました。
1-1. 桜木みなと(朱雀奏)—セレブ王子の華と知的なコメディセンス
新トップスター桜木みなとが演じたのは、朱雀グループの御曹司・朱雀奏(セレブ王子)。総資産数兆円を誇り、完璧なルックスを持つ役どころです。
桜木みなとは、長身で端正な容姿と、これまで培ってきた芝居の技術で、このセレブ王子役を極めて説得力高く演じきりました。
- 「華」と「品格」の体現: セレブ王子としての華やかさはもちろんのこと、その立ち居振る舞いには育ちの良さが滲み出ており、桜木みなとがトップスターとして持つ「品格」が朱雀奏というキャラクターに深みを与えました。
- コメディセンスの爆発: 本作はコメディ要素が非常に強く、桜木みなとの持つユーモラスな芝居の才能が最大限に発揮されました。時に天然で、時にズレた言動をするセレブ王子を、嫌味なく愛すべきキャラクターとして成立させたのは、彼女の持つ知的なコメディセンスに他なりません。特に、他の王子たちとのコミカルな掛け合いでは、宙組のトップとして笑いをリードする存在感を示しました。
- ダンスと歌唱の力: LDH作品の特徴であるハイスピードなダンスナンバーや、キャッチーな楽曲も難なくこなし、フィナーレでのダンスは、新生宙組の軽やかでスタイリッシュなカラーを象徴していました。
朱雀奏役を通して、桜木みなとは、従来の宝塚トップスターのイメージに「モダンで親しみやすいコメディアン」という新しい魅力を加えることに成功しました。
1-2. 春乃さくら(成瀬果音)—包容力と安定感のヒロイン
新トップ娘役の春乃さくらが演じたのは、朱雀奏が一目惚れするヒロイン、成瀬果音。様々な事情を抱えながらも、朱雀奏の純粋な愛を受け止め、彼の戦いを見守る存在です。
春乃さくらの魅力は、その安定した歌唱力と、トップ娘役としての温かい包容力にあります。
- 芝居のリアリティ: 彼女が抱える影の部分や、王子たちのバトルに戸惑う姿を、リアリティのある繊細な芝居で表現し、観客が感情移入できる等身大のヒロイン像を築き上げました。
- 歌声の癒し: 宙組を支える高い歌唱力を持ち、クライマックスで歌い上げるソロや、桜木みなととのデュエットは、作品の持つポップな雰囲気の中に、確かなロマンスの情感を吹き込みました。
- 新コンビの相性: 桜木みなとの軽やかなリードに対し、春乃さくらが持つ落ち着いた佇まいが、絶妙なバランスを生み出しました。二人のデュエットダンスは、新体制の「華やかで優雅なロマンス」を象徴し、新コンビとしての船出を確かなものとしました。
1-3. お披露目公演としての意義
この『PRINCE OF LEGEND』は、桜木みなとと春乃さくらにとって、従来の重厚なロマンス作品ではなく、ポップカルチャーの要素を取り込んだ挑戦的なお披露目となりました。この選択は、新生宙組が「伝統」を守りつつも「革新」を恐れない、柔軟で新しい価値観を持つ組であることを強く示しました。
第二部:豪華絢爛!個性豊かな王子たちの競演 🌟
「伝説の王子選手権」に集う大勢の「王子」たちを演じた宙組のスターたちは、それぞれが持つ個性を爆発させ、作品を「祭エンタテインメント」へと昇華させました。
2-1. 水美舞斗(京極尊人)—ヤンキー王子の熱い存在感
宙組生として出演した水美舞斗が演じたのは、京極尊人(ヤンキー王子)。ヤンキー界のレジェンドであり、圧倒的なルックスとカリスマを持つキャラクターです。
水美舞斗は、持ち前の熱いエネルギーと、研ぎ澄まされたダンスで、京極尊人というヤンキー王子を、朱雀奏と対をなす物語の核として確立しました。
- カリスマ性: 舞台に登場するだけで空気を変える圧倒的な存在感は、ヤンキー王子としての説得力を極限まで高めました。一瞬の動きや視線からも、水美舞斗が持つ「レジェンド」感が溢れ出ていました。
- 芝居の深み: ヤンキーでありながら、弟思いの優しい一面や、ヒロインを巡る葛藤など、複雑な内面を芝居の深みで表現し、単なるコミック的なキャラクターで終わらせませんでした。
- 桜木との対比: セレブで知的な朱雀奏(桜木)と、熱血で情に厚い京極尊人(水美)の対比は、作品のドラマツルギーを大きく高めました。二人の間で繰り広げられる「バトル」と「友情」のシーンは、まさにこの作品のハイライトでした。
2-2. 宙組を担うスターたちの躍動
他の王子たちを演じた宙組スターたちも、それぞれが「Team」を組み、独自の魅力を放ちました。
- 綾小路葵(鷹翔千空): Team 生徒会・生徒会長王子を演じた鷹翔千空は、生徒会長らしい理知的で完璧な美しさと、内面に秘めた熱いプライドを表現しました。長身を活かしたスタイリッシュな立ち姿は、生徒会長王子にふさわしいものでした。
- 結城理一(風色日向): Team 先生・先生王子を演じた風色日向は、教育者としてのクールさと、王子選手権に挑む情熱のギャップを魅力的に演じました。彼女が持つ清潔感と知的な雰囲気が、先生王子という設定に説得力を与えました。
- 天堂光輝(亜音有星): Team ネクスト・ダンス王子レッドを演じた亜音有星は、その役名通り、圧倒的なダンススキルで観客を魅了しました。次世代スターとしての存在感を存分に発揮し、舞台に若々しいエネルギーを注入しました。
- 京極竜(泉堂成): Team 京極兄弟・ヤンキー王子 弟を演じた泉堂成は、兄尊人(水美)を慕う弟としての可愛らしさと、ヤンキーとしての強さを兼ね備えたバランスの取れた演技で、水美舞斗と息の合った兄弟愛を見せました。
2-3. 組全体の爆発的なエネルギー
宙組全体がこの「祭エンタテインメント」に全身で挑んだ結果、舞台は常に活気に満ち溢れていました。王子たちが集結するシーンの群舞は迫力があり、LDH作品特有のダイナミックでアクロバティックな要素も取り入れられ、若手スターたちの身体能力の高さが際立ちました。
特に、「伝説の王子選手権」のバトルシーンでは、各Teamの個性を象徴するような演出がなされ、まるでライブ会場のような熱気が劇場全体を包み込みました。
第三部:宝塚とLDHの融合—新時代のミュージカル・コメディ 🎭
『PRINCE OF LEGEND』が成功を収めた最大の理由は、異色のコラボレーションであるLDHの世界観を、宝塚歌劇が独自の解釈で昇華させた点にあります。
3-1. コメディ要素の昇華と宝塚らしさ
原作が持つ「学園バトル×コメディ」の要素は、宝塚版において、さらに洗練されたロマコメへと昇華されました。
- パロディとオマージュ: 作品中には、宝塚歌劇団の過去の作品や慣習を彷彿とさせるパロディ要素が随所に散りばめられ、宝塚ファンを大いに楽しませました。
- キャラクターの愛らしさ: 理事長(愛すみれ)や奏の父(松風輝)をはじめとする脇を固めるキャストが、コメディの要として機能し、物語に軽快なリズムを与えました。愛すみれが演じた実相寺光彦(Team 理事長・理事長)は、その強烈な個性とコミカルな芝居で、舞台のムードメーカーとなりました。
単なるイケメンの競い合いではなく、王子たちがヒロインを巡って繰り広げるコミカルで、どこか切ないロマンスが、宝塚の得意とする世界観とマッチしていました。
3-2. スピード感のある舞台転換と音楽
作品全体のテンポの速さは、現代の観客の嗜好に合ったものであり、次から次へと場面が展開していくスピーディーな演出は、観客を飽きさせませんでした。
- 音楽: キャッチーで耳に残るオリジナル楽曲と、時にはロック調の激しいナンバーが、王子たちの情熱的なバトルとロマンスを彩りました。
- 衣装と美術: 王子たちそれぞれの個性を象徴する豪華な衣装や、学園という設定を最大限に活かした華やかな舞台美術が、視覚的な楽しさを提供しました。
3-3. 新しいファン層へのアピール
LDHとのコラボレーションは、宝塚歌劇団がこれまでリーチできなかった新しいファン層へアピールする絶好の機会となりました。原作ファンが宝塚の舞台に触れるきっかけとなり、その結果、宝塚歌劇団の持つ「華麗さ」「ダンスのレベルの高さ」「男役の美しさ」という普遍的な魅力が、若い世代に再認識されることとなりました。
第四部:宙組の未来への展望—桜木みなと新体制の確立 🚀
『PRINCE OF LEGEND』は、桜木みなと新体制の宙組が目指す方向性を明確に示した公演でした。
4-1. 宙組の「ポップ」で「スタイリッシュ」な組カラー
桜木みなとは、宙組の生え抜きとして長年トップに次ぐ立場を担ってきたベテランならではの安定感と、新しいものに挑戦する柔軟性を持ち合わせています。彼女がトップに就任したことにより、宙組は、従来のスペクタクル路線に加え、より「ポップ」で「スタイリッシュ」、そして「知的でユーモラス」なカラーを打ち出しました。これは、組子の若々しいエネルギーと、水美舞斗という実力派スターが加わったことで、実現可能となった新しい魅力です。
4-2. 若手スターの成長と課題
本公演で大役を担った鷹翔千空、風色日向、亜音有星、泉堂成といった若手スターたちは、個性豊かな「王子」を演じきり、その表現力の幅を広げました。彼女たちは、トップスターを中心とした物語の中で、それぞれのキャラクターを際立たせることに成功し、新生宙組の未来を担う人材として、確かな成長を見せました。
また、トップコンビのお披露目でありながら、水美舞斗という実力派の存在が、宙組生は高いレベルの芝居とダンスに触れ、組全体のモチベーションと技術力の底上げに繋がったと言えます。
4-3. 挑戦し続ける宙組の姿勢
この『PRINCE OF LEGEND』という異色の作品を選んだことは、宙組が常に新しいエンタテインメントの形を模索し、挑戦し続ける組であることを示しています。宝塚の伝統的な美しさと、現代のポップカルチャーを融合させたこの試みは、宝塚歌劇団の111周年という節目に、大きな成功を収め、今後の宝塚作品の多様性にも影響を与えるでしょう。
結び:新伝説を刻んだ宙組の輝き 💐
宙組公演『PRINCE OF LEGEND』は、桜木みなとと春乃さくらという新トップコンビの誕生を盛大に祝う、最高の「祭エンタテインメント」となりました。桜木みなとが体現した愛すべきセレブ王子と、春乃さくらの優しさに満ちたヒロイン像は、観客に清々しい感動と笑顔をもたらしました。
豪華な王子たちが繰り広げた熱いバトルとロマンスは、宙組の層の厚さと、若手スターたちの爆発的なエネルギーを証明しました。新体制の宙組は、この成功を糧に、さらなる飛躍を遂げることは間違いありません。
この新しい伝説を刻んだ宙組の輝きは、これからも宝塚歌劇団の舞台を明るく照らし続けることでしょう。

