【注目のスター紹介】花組・永久輝せあ 雪組から花組トップスターへ――新人公演・バウ・東上主演を経て辿り着いた『エリザベート』トート

スター情報

2026年、宝塚版初演30周年を迎えた『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』で、黄泉の帝王トートを演じている花組トップスター・永久輝せあ。

実は『エリザベート』は、永久輝にとって宝塚人生の原点ともいえる作品です。高校1年生の冬、2002年花組公演の映像をきっかけに作品へ夢中になり、宝塚への憧れをさらに強くしたと明かしています。

そして長い時を経て、今度は自らが花組トップスターとしてトートを演じる側になりました。

そこに至るまでの道のりは、決して一色ではありません。

雪組で新人公演主演を重ね、バウホール主演を経験。花組への組替えという大きな転機を経て、東上主演、全国ツアー主演、トップスターを支える立場を経験し、2024年にはついに花組トップスターへ。

振り返ってみると、永久輝せあの歩みを象徴する言葉は「変化」なのかもしれません。

雪組から花組へ。若手スターから主演者へ。端正な青年から、復讐に生きる男、愛によって破滅していく男、人ならざる存在へ――。

そして今、“死”そのものを象徴するトートへ。

今回は、永久輝せあがどのように現在のトップスター像を築いてきたのか、代表作とともにその軌跡をたどります🌹✨

❄️ 雪組で育った若手時代――新人公演主演4回で磨いた役の幅

永久輝せあは2011年4月『めぐり会いは再び』で初舞台を踏み、翌年雪組へ配属されました。

大きな転機となったのは、2015年『ルパン三世-王妃の首飾りを追え!-』。新人公演でルパン三世を演じ、初主演を果たします。

その後も『るろうに剣心』の緋村剣心、『私立探偵ケイレブ・ハント』のケイレブ・ハント、『幕末太陽傳』の居残り佐平次と、新人公演主演は計4回に及びました。

この4役を並べるだけでも、永久輝の若手時代が興味深く見えてきます。

洒脱でコミカルなルパン三世。静かな影と強さを持つ緋村剣心。大人の落ち着きを求められるケイレブ。そして、人を食ったような軽妙さを持つ居残り佐平次。

似たタイプの主人公を繰り返したのではなく、作品ごとにまったく異なる色を求められていたのです。

現在の永久輝に感じる「作品によって自分の印象を変える力」は、トップスターになって突然身についたものではありません。雪組時代から異なる人物を演じる経験を積み重ねてきたことが、その土台になっているのでしょう。

👑 『PR×PRince』――バウ初主演で証明した“センターの華”

2019年には『PR×PRince』で宝塚バウホール単独初主演。

永久輝が演じたのは、ペキエノ・パライソ王国の第一王子ヴィクトルです。

この作品は、永久輝のキャリアの中でも少し特別な位置にあるように感じます。

後に演じる重い影を背負った主人公とは異なり、明るいミュージカル・コメディーの中心に立つ王子役。永久輝の端正な容姿や品のある立ち姿、そして舞台の中央に立った時の華やかさが、そのまま作品の魅力につながる役でした。

新人公演では「本役のトップスターが背負っている作品」を学んできた永久輝が、今度は自分自身の主演作として一つの舞台を背負う。

『PR×PRince』は、スターとしての華と主演者としての責任、その両方を本格的に経験した作品だったといえるでしょう。

そして同じ2019年、永久輝に大きな転機が訪れます。

長く育ってきた雪組を離れ、花組へ組替えとなったのです。

🌸 雪組から花組へ――新しい環境で始まった“第二章”

2019年11月、永久輝せあは花組へ組替えとなりました。

新人公演主演4回、バウホール主演まで経験した雪組を離れ、新しい組へ移る。

スターとして大きな変化だったことは想像に難くありません。

雪組で培ってきた芝居の力を持ちながら、花組という新たな環境で、男役としての見せ方やショーでの存在感をさらに磨いていく。

組替え後の永久輝を見ると、もともとの端正さに、花組らしい華やかさや色気が少しずつ重なっていったようにも感じられます。

また同年には、三井住友カードならびにVJAグループのイメージキャラクターにも就任。

花組への組替えとほぼ同じ時期に、永久輝せあにとって新たなスター人生が始まりました。

そして、この花組での経験が、その後の男役像を大きく変えていきます。

🌙 『冬霞の巴里』――美しさに“影”が加わった東上主演作

花組時代の永久輝せあを語るうえで、外すことのできない作品の一つが2022年『冬霞の巴里』です。

永久輝が演じたオクターヴは、幼い頃に父を殺された過去を持ち、姉アンブルとともに復讐のためパリへ戻ってくる青年。

19世紀末のパリを舞台に、亡霊や記憶、家族への愛憎が入り混じる、暗く幻想的な作品でした。

『PR×PRince』で見せた明るい王子像とは、ほとんど正反対です。

オクターヴが抱えているのは、復讐心、家族への複雑な感情、そして過去から逃れられない苦しみ。

永久輝の整った美しさが、華やかさではなく“冷たさ”や“危うさ”として機能する作品でもありました。

梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、東京建物 Brillia HALLで、主演者として作品を背負った永久輝。

本人も後にオクターヴを「好きだった役」の一つに挙げています。

永久輝せあの美しさに、“影”という新しい魅力が加わった――。

『冬霞の巴里』は、その後の男役像につながる大きな転機だったのではないでしょうか。

🔥 2番手時代――『激情』で見せた愛と破滅、『アルカンシェル』で支えた花組

花組でトップスターに次ぐ主要男役として存在感を高めていった永久輝は、主演者としての経験もさらに積み重ねていきます。

その代表作が、2023年全国ツアー『激情-ホセとカルメン-』です。

演じたドン・ホセは、真面目な軍人でありながら、自由奔放なカルメンへの愛によって人生を大きく狂わせていく男。

恋に落ち、執着し、理性を失い、最後には破滅へ向かっていきます。

ここでは、永久輝が持つ端正さだけではなく、感情が崩れていく危うさや、激しい情念を表現する力が前面に出ました。

一方、2024年『アルカンシェル』では、柚香光・星風まどかの退団公演でフリードリッヒ・アドラーを担当。

自ら主演者として作品を背負う一方、本公演ではトップスターを支え、組全体の舞台を成立させる。

この二つの立場を経験した時期こそ、永久輝せあがトップスターになるための大切な準備期間だったのではないでしょうか。

そして『アルカンシェル』千秋楽の先には、いよいよ永久輝自身が花組を率いる時代が待っていました。

✨ 2024年、花組トップスターへ――『ドン・ジュアン』から始まった新たな時代

2024年5月、永久輝せあは花組トップスターに就任しました。

トップスターとしての最初の主演公演は、御園座『ドン・ジュアン』。

相手役の星空美咲とともに、新しい花組トップコンビとしてスタートを切ります。

永久輝が演じたドン・ジュアンは、女、酒、快楽を追い求める放蕩者。多くの女性を魅了しながら、本当の愛を知らずに生きてきた男が、一人の女性との出会いによって変わっていく物語です。

華やかで、危険で、色気がある。

トップスターお披露目でありながら、“優等生的な主人公”ではなく、欲望や罪を抱えた男から始まったことにも、永久輝らしさを感じます。

その後、宝塚大劇場トップお披露目となった『エンジェリックライ』『Jubilee』では一転、天使アザゼルを演じました。

ドン・ジュアンから天使へ。

トップ就任直後から、永久輝せあは一つのスター像に自分を固定しませんでした🌸

🎭 トップ就任後も変化し続ける――吸血鬼、文豪、武将、マジシャン

トップスター就任後の出演作を見ても、その振れ幅は非常に大きいものがあります。

2025年『悪魔城ドラキュラ』では、吸血鬼アルカード。人間ではない存在だからこその孤独や美しさをまとい、ゴシックな世界の中心に立ちました。

同年『Goethe!』では、若き日の文豪ゲーテ。恋に傷つきながら、自らの表現を探していく一人の青年を演じています。

2026年『蒼月抄』では平知盛。繁栄から滅亡へ向かう平家の運命を背負う武将という、非常に重い役でした。

一方、『マジシャンの憂鬱』ではシャンドールとして、ウィットの効いた会話と自然体の大人の男役を披露。

吸血鬼、文豪、武将、マジシャン。

トップスターになったからといって、「永久輝せあらしい役」を繰り返しているわけではありません。

むしろ作品ごとに違う人物と出会い、そのたびに自分の男役像を更新している。

その姿勢こそ、永久輝せあのトップスターとしての大きな魅力ではないでしょうか✨

🌹 そして『エリザベート』トートへ――宝塚への憧れが30周年の舞台につながる

そして2026年、永久輝せあは『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』でトートを演じています。

1996年の宝塚初演から30周年。

宝塚では2018年月組公演以来8年ぶりとなる再演で、今回の花組公演は「30周年のアニバーサリーイヤーに新たな歴史を紡ぐ」作品として上演されています。

しかも『エリザベート』は、永久輝自身が高校1年生の冬に映像を見て夢中になり、宝塚への思いをさらに強くした作品。

憧れていた作品に出演するだけではありません。

30周年という節目に、花組トップスターとして黄泉の帝王トートを演じる――。

永久輝せあのキャリアを振り返った後で見ると、この巡り合わせには特別なものを感じます。

これまで演じてきた役にも、トートへつながる要素が見えてきます。

オクターヴが持っていた影。

ドン・ホセの激しい執着。

ドン・ジュアンの妖しい色気。

アルカードの人ならざる美しさ。

平知盛が背負った宿命。

それらを経験してきた永久輝が、今度は「死」という概念そのものを舞台上に存在させることに挑んでいます。

しかし、永久輝が目指しているトートは、単に冷たく恐ろしい“死”ではありません。

開幕前には、トートの中にある「愛」を大切にし、“死”の先に安らぎや温かさが感じられるところへたどり着きたいという思いを語っています。

死でありながら、愛する。

冷たい存在でありながら、その先には温かさがある。

この矛盾をどう一人のトートとして成立させるのか。

そこに、2026年花組版『エリザベート』で永久輝せあが挑んでいる大きなテーマがあるのでしょう🌹

🌸 「完成」ではなく、さらに変わっていくトップスターへ

永久輝せあの歩みを振り返ると、決して一直線ではありません。

雪組で新人公演主演を4度経験し、『PR×PRince』でバウホール主演。花組への組替えを経て『冬霞の巴里』で東上主演、『激情』で全国ツアー主演を務め、やがてトップスターへ。

トップ就任後も、放蕩者、天使、吸血鬼、文豪、武将、マジシャンと、異なる人物へ次々と変化してきました。

その先に、現在のトートがあります。

『エリザベート』前夜祭で永久輝は、歴代の出演者がどのように作品を紡いできたのかを胸に留めながら、「この作品とともに自分がどう変わっていくのかも楽しみ」と語っています。

ここが、永久輝せあというスターの面白さなのかもしれません。

トートを演じることが“到達点”なのではなく、トートという大役との出会いさえ、自分をさらに変えていくための一つの通過点としている。

雪組で育ち、花組で新たな色をまとい、トップスターとなった永久輝せあ。

『エリザベート』を経たその先で、次はどんな人物と出会い、どんな新しい男役像を見せてくれるのでしょうか。

変化を恐れず歩み続ける永久輝せあだからこそ、その未来をこれからも楽しみに見届けていきたいですね🌹✨